相続手続には、被相続人(亡くなった方)の出生から死亡までの戸籍が必要です。
かつては、被相続人の出生から死亡までの戸籍を取得するのに、本籍地ごとに請求しなければならなかったため、非常に時間がかかっていました。
現在は、2024年3月から開始された広域交付という仕組みによって、相続人の方が最寄りの市役所などで全ての戸籍を一度に集めることができるようになりました。
この記事では、広域交付制度をつかって、戸籍を取得する具体的な流れについて解説します。
※本記事は、公開時点での法令等に基づいて作成されております。最新情報については、専門家にご相談いただくか、ご自身でご確認ください。
広域交付による戸籍の請求ができるか確認する
まず大事なのは、広域交付による請求をすることができるか確認することです。広域交付による請求ができるのは、以下の方に限られます。
- 本人及び配偶者
- 父母、祖父母などの直系尊属
- 子、孫などの直系卑属
そのため、被相続人との関係が兄弟姉妹や甥姪などである場合は、広域交付によって一度に全ての戸籍を集めることはできません。
郵送による請求で広域交付の制度を利用することは認められていないため、請求者が自ら窓口に行く必要があります。
また、委任状などで代理人が広域交付を利用することは認められていません。そのため、本人が窓口に行けない場合も、広域交付で戸籍を請求することはできません。
そもそも広域交付の制度が利用できなければ、面倒ですが従来通りの方法で少しずつ戸籍を集めていくしかありません。
偽りその他不正な手段により戸籍の交付を受けた場合、罰則(刑罰・30万円以下の罰金)もありますので、適法に制度を利用できるかどうかをきちんと確認しましょう。
対象とならない書類
以下の書類は広域交付の対象外です。
- 戸籍一部事項証明書(戸籍抄本)
- 戸籍の附票
- コンピュータ化されていない戸籍
これらを取得するには、従来通り本籍地で請求する必要があります。
被相続人の「本籍」と「筆頭者」を調べる
広域交付制度では、請求時に「本籍」と「筆頭者」を申請書に記入する必要がありますが、本籍がわからない場合に調べる方法は、以下の2つがあります。
- 自分の戸籍を取得する
- 被相続人の住民票の除票を取得する
自分の戸籍から父母や子どもの本籍を確認することができます。
住民票の除票は、被相続人が亡くなった時点で住所があった市区町村役場で取得できます。そこから最後の本籍を確認することができます。
市区町村役場へ行く
全国どこの市区町村役場でも請求できます。
必要なのは、本人確認書類のみです。
ただし、本人が窓口に行く必要があります。郵送や代理人による取得は認められていないのでご注意ください。
なお、本人確認書類については、原則として写真付きの公的身分証明書しか認められていません。健康保険証や年金手帳等を複数提示する方法では利用できませんので、ご注意ください。
待つ(笑)
混雑状況によりますが、1時間から2時間、長いとそれ以上待つことになります。
十分な時間を確保した上で取得に臨みましょう。
また、その日の間に交付を受けることができない場合は、職員にその旨を申し出ることで後日交付を受けることができる場合もありますので、どうしても時間がなくて仕方がないときは、相談をしてみるのも一つの手でしょう。
必要な戸籍が揃ったかチェックする
出生から死亡までのつながりが取れているかを確認しましょう。
広域交付により被相続人の戸籍を取得したものの、一部が不足していれば、もう一度役所に行く必要があります。
役所が出したからといって、それをそのまま信じて(確認せずに)登記を申請することはできません。役所の方も間違えることがあります。
きちんと内容の確認をして問題がなければ、広域交付による戸籍の取得は終了です。
まとめ
以前は、相続登記に必要な被相続人の戸籍を集めるのに、本籍地ごとに請求しなければならなかったため、非常に時間がかかっていましたが、現在は、広域交付を利用することで一度に集めることができるようになりました。
私も、基本的には依頼者の方に広域交付で書類を集めていただくようにご案内しています。
専門家が集めるよりも早いですし、戸籍を自分で集めれば費用を抑えることにもつながります。現在は取得できる書類の種類や範囲に限りがありますが、いずれは、あらゆる書類が広域交付の対象になればいいですね。
この記事では、広域交付制度をつかって、戸籍を取得する具体的な流れについて簡単に説明しました。
この記事が参考になれば幸いです。
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