相続が開始すると誰が相続人になるの?

A. 相続が開始したとき、民法の規定に従って相続人が定まります。

相続が開始すると誰が相続人になるのかは、民法で定められています。

民法の基本的な考え方を理解すれば、誰が相続人となるのかを判断することが可能です。

この記事では、相続人に関する民法のルールについて簡単に説明します。

目次

生きている人しか相続人にはなれない

まず、大原則として、相続が開始した時点で生きている人しか相続人にはなれません。

そんなの当たり前じゃないかと思われるかもしれませんが、以下のような問題が生じます。

  • お腹の赤ちゃんは相続人になるのか
  • 同時に亡くなった(前後不明)の場合はどうなるのか

順に説明します。

胎児は相続人になるのか?

いきなり結論ですが、胎児は、相続人となります。

民法には「胎児は、相続については、生まれたものとみなす」(886条1項)という規定があります。

胎児は生まれたものとして扱われるため、相続人の死亡時にお腹の中にいたとしても、相続人となります。

ただし、同第2項の規定によると、「死体で生まれたとき」は相続人となりません。

そのため、胎児が生まれる(または死産となる)までは、相続人が確定しないままの状態が続きます。

同時に亡くなった場合は?

では、被相続人が死亡した時点で生きていたかどうか不明な場合はどうでしょうか。

たとえば、同じ車で交通事故に遭い、同時に亡くなった(と思われる)ような場合です。

重体であったとしても、被相続人より少しでも長く生存していれば、相続人となります。

しかし、亡くなった前後関係が不明な場合は、相続人とはなりません。

下記の規定があるためです。

第三十二条の二 数人の者が死亡した場合において、そのうちの一人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
(引用元:民法|e-Gov法令検索

同時に死亡したものと推定する=相続の開始時点で生きていないため、相続人ではなくなります。

相続人の順番は?

相続人には順番があります。

先順位の相続人が一人でも生きていれば、後順位の人は相続人となりません。

例えば、子がいれば父母は相続人となりませんし、父母のいずれかがいれば兄弟姉妹は相続人となりません。

そして、すべての場合で必ず相続人となるのが「配偶者」です。

配偶者と子、配偶者と父母、配偶者と兄弟姉妹といったように配偶者は必ず相続人となります。

ただし、内縁関係や離婚後の元配偶者は相続人となりません。

第一順位の相続人

まず相続人となるのは、被相続人の子です。

実子だけではなく、養子も相続人となり、両者の間で相続分の違いはありません。

再婚相手が亡くなった場合の連れ子は、法律上の親子関係がないため相続人となりませんが、被相続人と養子縁組をしていれば、連れ子も相続人となります。

また、いわゆる隠し子がいる場合、認知されているときは相続人となります。

第二順位の相続人

子の次に相続人となるのは、被相続人の父母(直系尊属)です。

養親がいる場合、養親だけでなく、実親も相続人となります。

ただし、特別養子縁組の場合は、実親との法律上の親子関係が消滅するため、養親のみが相続人となります。

父母がいずれも亡くなっていれば、祖父母が相続人となります。

第三順位の相続人

被相続人に子がおらず、父母や祖父母もすでに他界しているような場合、相続人となるのが兄弟姉妹です。

父の前妻の子や、母の婚外子など、片親を同じくする兄弟姉妹も相続人となります。

異母兄弟・異父兄弟の相続分は、両親を同じくする兄弟姉妹の2分の1となります。

相続放棄によって先順位の相続人がいなくなった場合も、次順位の者が相続人となります。

代襲相続とは?

相続人となったはずの子や兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合、孫や甥姪が相続人となります。

これを「代襲相続」といい、亡くなった子や兄弟姉妹を「被代襲者」といいます。

代襲者の相続分は、被代襲者の相続分と同じになります。

被代襲者となるのは?

被代襲者となるのは、以下のいずれかです。

  • 被相続人の子
  • 被相続人の兄弟姉妹

被相続人の配偶者や直系尊属は被代襲者となりません。

よって、配偶者が亡くなっていた場合に配偶者の父母が代襲して相続人となったり、被相続人の父母のいずれかが亡くなっていた場合にその祖父母が代襲して相続人となることはありません。

代襲原因となるのは?

上記の被代襲者に下記の事由が生じた場合、代襲相続となります。

  • 被相続人死亡以前の死亡
  • 欠格
  • 廃除

欠格・廃除については後述しますが、それによって欠格者、被廃除者は相続人の資格を失います。

これらの場合に、代襲相続人として子の子(被相続人の孫)や兄弟姉妹の子(被相続人の甥姪)が相続人となります。

一方で、相続放棄は代襲原因とはなりません。つまり、子や兄弟姉妹が相続放棄をしたとしても、それによって相続放棄をした者の子が相続人となることはありません。

代襲者も亡くなっている場合は?

代襲者も亡くなっている場合、さらにその代襲者の子(被相続人の曾孫)が相続人になります。

ただし、兄弟姉妹の相続に再代襲は認められておらず、被相続人の甥姪の子が代襲することはありません。

相続人にならない場合は?

本来は相続人となるはずの者が、一定の事由によって相続人となる資格を失う場合があります。

それが、「欠格」と「廃除」です。

欠格とは?

推定相続人が民法第891条の規定に該当する場合は、相続人となることができません。

長いので引用しますね。

(相続人の欠格事由)
第八百九十一条 次に掲げる者は、相続人となることができない。
一 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者
二 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。
三 詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者
四 詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者
五 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者
(引用元:民法|e-Gov法令検索

たとえば、「親を殺して相続する」っておかしいですよね。

そういう常識的な感覚が法律にも反映されています。

殺人未遂は欠格に当たるが傷害致死なら当たらないなど細かい論点はありますが、ここでは割愛します。

廃除とは?

遺留分のある推定相続人が廃除されると、相続人ではなくなり、遺留分も請求できなくなります。

廃除の規定はこちらです。

(推定相続人の廃除)
第八百九十二条 遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。
(引用元:民法|e-Gov法令検索

廃除は本人が家庭裁判所に請求するか、遺言によってする場合は、被相続人の死亡後に遺言執行者が家庭裁判所に請求して行います。

遺留分を有する相続人が対象であるため、兄弟姉妹を廃除することはできません。

兄弟姉妹はもとから遺留分がないため、財産を与えたくない場合は、遺言を書けば足りるからです。

まとめ

以上、簡単にではありますが、相続人に関する民法の規定を説明してきました。

欠格や廃除という例外を除けば、原則として相続順位にしたがって、相続人が定まります。

基本的な考え方はこの記事で説明できたと思いますので、参考になれば幸いです。

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