夫または妻が亡くなり、相続人が残された配偶者と子である場合に、相続登記をするにはどのような書類が必要なのでしょうか。
この記事では、相続登記を申請するうえで必要な書類や手続の流れ、注意点について解説します。
※本記事は、公開時点での法令等に基づいて作成されております。最新情報については、専門家にご相談いただくか、ご自身でご確認ください。
必要書類
相続登記で必要な添付書類は以下のようになります。
なお、共通する書類は1通あれば大丈夫です。
(例えば、夫婦と子が同じ戸籍に載っていれば、それぞれ1通ずつ取得する必要はなく、あわせて1通でOK。)
不動産に関する書類
- 固定資産税納税納税通知書(課税明細書)
- 固定資産評価証明書
登録免許税の計算には、不動産の評価額が必要です。
不動産の評価額を知るために上記のいずれかを用意します。
毎年5~6月に納税義務者の住所に送付される固定資産税納税通知書の後ろには課税明細書がついていて、そこに評価額が記載されています。
課税明細書ですべての不動産の評価額がわかる場合、評価証明書の取得は不要です。


人に関する書類
被相続人の書類
- 出生から死亡までの戸籍謄本等(広)
本籍地の市区町村役場で取得します。 - 住民票の除票または戸籍の附票(コ)
住所地の市区町村役場で取得します。本籍の記載が必要です。
相続人・配偶者の書類
- 戸籍謄本(コ・広)または戸籍抄本(コ)
本籍地の市区町村役場で取得します。 - 住民票(コ) ※不動産を取得する場合
住所地の市区町村役場で取得します。 - 印鑑証明書(コ) ※遺産分割協議をする場合
住所地の市区町村役場で取得します。
相続人・子の書類
- 戸籍謄本(コ・広)または戸籍抄本(コ)
本籍地の市区町村役場で取得します。 - 住民票(コ) ※不動産を取得する場合
住所地の市区町村役場で取得します。 - 印鑑証明書(コ) ※遺産分割協議をする場合
住所地の市区町村役場で取得します。
コンビニ交付による取得が可能な書類
上記のうち、(コ)と書いている書類は、コンビニ交付による取得が可能です。
※マイナンバーカード(利用者証明用電子証明書が記録されたもの)が必要。
住民票の除票は対象外ですが、戸籍の附票であれば、請求者と被相続人が同じ戸籍に入っている場合は取得できます。
ただし、市区町村により、取得できる証明書の種類が異なるためご注意ください。
広域交付による取得が可能な書類
上記のうち、(広)と書いている書類は、広域交付による取得が可能です。
※コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は対象外。
本人、配偶者、直系尊属(父母、祖父母など)、直系卑属(子、孫など)に限り、全国の市区町村の窓口で対象となる戸籍謄本等が取得できます。
広域交付を利用することで、本籍地ごとに請求しなくても、最寄りの役場で手続が完結します。

手続の流れ
被相続人の名義の権利証、固定資産税納税通知書、名寄帳等から不動産を特定する作業を行います。
(→後記「注意点:不動産の調査もれに注意」を参照)
戸籍書類を収集し、相続人を特定します。
必要に応じて、成年後見人選任の申立等を行います。
戸籍書類の他、登記申請に必要な書類を集めます。
遺産分割協議で不動産の取得者を決定します。
不備なく登記申請書を作成します。
不動産の所在地を管轄する登記所(法務局)に申請書・添付書類を提出します。
適宜、補正対応等を行います。
原本還付書類、登記識別情報通知、登記完了証を受け取ります。
登記所に申請書類を提出してから完了までの期間は管轄ごとに異なります。
注意点
不動産の調査もれに注意
被相続人名義の不動産を調査するには、
- 権利証
- 固定資産税納税通知書
- 名寄帳
これらの書類を確認する方法があります。
固定資産税納税通知書には非課税不動産が記載されないため、名寄帳も取得するのが無難です。
ただし、市区町村により共有名義の不動産が記載されない場合があるため注意が必要です。
被相続人よりも前に開始した相続で登記手続が行われていない場合などに、共有名義の不動産があることを見落として手続を進めてしまうおそれがあります。
そのため、名寄帳を請求する際には、共有名義のものも含めてすべての不動産が記載されているものを請求するように気をつけなければなりません。
さらに、念を入れるのであれば公図や住宅地図を駆使して調査をする方法もあります。
どこまで調査をするべきかは一概には言えませんが、登記もれのリスクは後になって大きな問題につながりますので、十分な調査をしておくことが必要です。
登録免許税の特例に注意
相続登記を申請する際、登録免許税の免税措置を受けられる場合があります。
免税には、所定の文言を申請書に記載する必要があり、記載しなければ当該措置の適用を受けることができません。
よって、適用可否について検討したうえで、可能な場合は忘れずに記載をするようにご注意ください。
登記識別情報通知の不通知に注意
登記識別情報通知は任意で「不通知」とすることができます。
ただし、特段の事情がない限りは、不通知としないことをおすすめします。
将来的に売却等をする場合に、資格者による本人確認情報の作成が必要となり、その費用がかかるからです。
同様の理由で、いわゆる「保存行為」による相続登記の申請もおすすめできません。
申請人となる相続人には登記識別情報通知が発行されますが、申請人ではない相続人には発行されないからです。
他の共有者の分は本人確認情報の作成が必要となり、やはり費用の負担が発生してしまいます。
子どもが未成年の場合に注意
未成年者が完全に有効な法律行為を行うには、親権者の同意や代理が必要です。
遺産分割協議についても同様なのですが、配偶者自身も相続人であるため、子の法定代理人として遺産分割協議を行うことができません。
そのため、家庭裁判所に特別代理人を選任してもらう手続が必要となります。

まとめ
この記事では、夫または妻が亡くなり、相続人が残された配偶者と子である場合の必要書類や手続の流れについて解説しました。
このように相続関係がシンプルで、かつ、不動産が自宅しかないような場合は、正直なところ、ご自身でも手続が可能な内容になってくるのかなと。
とはいえ、必要な書類を集めたり、正確な内容の書類(遺産分割協議書や登記申請書)を作成するのは結構大変だという声も耳にしますので、司法書士へ依頼することをご検討いただければと思います。
面倒な手続を一任し、安心して相続手続を終えることができますからね。
この記事が参考になれば幸いです。
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